診療日記

黒野保三先生のご指導による最後の研究論文がアメリカの雑誌に掲載されました

2023年01月10日更新

私の師匠である黒野保三先生は高木健太郎先生(名古屋大学名誉教授・名古屋市立大学学長・参議院議員)に師事され、1973年から2021年まで、私達の治療の根本である太極療法(生体制御療法)の使用するツボや深さなどの刺激量、治療間隔などを基礎的な実験を行って確立されました。また、鍼治療の後に行う超音波の併用治療の有効性も報告されました。
鍼治療の最も得意とする内科系疾患である肝臓病、糖尿病、高血圧をはじめとする生活習慣病や不定愁訴、免疫、線維筋痛症に対する有効性など100編以上の論文を執筆されておられます。

昨今、「癒し」という言葉が独り歩きをしておりますが、この「癒し」とはまさしく自律神経の副交感神経活動を高めることなのです。これが鍼治療でできることを証明されたのが黒野先生と元名古屋市立大学教授の早野順一郎先生との共同研究によるものです(2011年)。ホッとする、気持ちいい、楽だという感覚は誰でも経験されていると思いますが、この時には副交感神経が高ぶっている状態です。この状態を鍼治療で作れるという論文です。

さて、副交感神経活動を高めることが全ての鍼治療を行う施術者ができるかというと、そうではありません。黒野先生が実践されておられた太極療法(生体制御療法)でないとできないのです。これができる施術者は東洋医学研究所®グループのメンバーだけです。
黒野先生は残念ながら2021年9月27日に他界されましたが、先生の精神を引き継いで(公社)生体制御学会研究部情報評価班で研究は継続中です。今回、アメリカの『Journal of Integrative and Complementary Medicine』に「Effects of Acupuncture on Autonomic Nervous Functions during Sleep:Comparison with Non-acupuncture Site Stimulation using a Crossover Design」と題して論文掲載されました。これが黒野先生のご指導による最後の論文となりました。

「睡眠中の自律神経機能に対する鍼治療の効果 -クロスオーバー試験を用いた非経穴部位との比較-」
この内容は、鍼治療によって睡眠中の心臓副交感神経活動が優位となり、特にノンレム睡眠にその傾向が強くみられ、睡眠の質が向上したことが確認されたというものです。
鍼治療を受けた日の夜はとてもよく眠れたといわれる人が8割程おられることをヒントに黒野先生のご指導により研究が始まり10年以上が経ちましたが、まだ十分なものとは言えません。私達が努力して黒野先生の意思を引き継いでいきたいと思います。

鍼治療は痛みの疾患ばかりが取り上げられますが、実は内科系の疾患に有効です。老化防止にも効果がありますので、是非ご相談ください。

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