患者様の声

腰が痛い

40歳 男性

腰痛

現病歴

5日ほど前、仕事を終えて帰宅する途中に腰の重だるさを感じた。その日の夜、腰の痛みで目が覚めた。次の日の朝、動くのがつらく、左膝まで痛くなったので、近所の整形外科を受診、レントゲンでは異常がなく、湿布と鎮痛薬をもらって飲んでいたが良くならず、仕事も休んでいたがあまり良くなってこないので、来院した。

社会歴

建築会社で事務職、1ヶ月に2~3回現場に出るが、重い物は持たない

症状

特に左の腰が痛い・中腰や長時間の座位で痛みが強くなり、立ち上がるのが困難・右膝の痛み

所見

ヘルニア症状 (自覚症状や徒手検査など) はなし、後屈 (腰を後に反らす) 時痛、背中に近い所の痛みと圧痛あり、運動はほとんどしない

要約

この患者さんは椎間関節の異常があります。これは背骨のひとつひとつをつないでいる関節で、負担がかかることにより、その部位の関節が炎症を起こすことによって起こるものとされています。したがって、血行改善と鎮痛効果を目的とした鍼治療を行いました。

経過

毎日鍼治療を行いました。その結果、2回の鍼治療で仕事ができるほど回復し、3日後から仕事に復帰されました。しかし、腰の重だるさはあり、長時間座位の後の立ち上がり動作が完全ではないので、合計8回の鍼治療を行い、痛みがほとんどなくなったので治療を終了しました。また、3回目から筋力の改善を目的に腰痛体操を行っていただきました。腰痛体操は当分の間続けて頂くようにお願いしました。痛みが出る前の仕事の内容が体にとっていつもよりハードな内容であったものと思われ、その結果として膝の痛みも出たものと思われます。腰痛の改善と共に膝の痛みも改善しました。

コメント

事務職の人は運動不足の人が多く、腰部の筋力が低下していることが 多く、上半身を支えるだけの筋力でない場合、何かのきっかけで腰痛を発症することが多いのが現状です。一般に事務職に椎間板ヘルニアが多いとされるのはこ のことからいえるのだと考えられます。椎間板の他に今回のような椎間関節の痛みも多いことから、痛みをある程度和らげたら運動をして腰の筋力増強を行うよ うにしなければいけません。そのためには適確な指導のもとに腰痛体操を鍼治療と平行して行っていただくとより効果です。腰痛には様々な原因がありますが、これをある程度把握する目的で東洋医学研究所ホームページのコラム6月号に掲載させて致しましたので、是非一度ご覧下さい。

頭が重い

53歳 女性

更年期障害

現病歴

8年ほど前より血圧が高く、降圧薬を飲んでいる。5年前より頭が重い状態が続いている 半年前に卵巣膿腫で手術をしてから、眠れない、冷や汗などの症状が出て、体調が悪くなった。病院でホルモンのバランスが悪いといわれホルモン剤を飲んでいる。 知人の紹介で来院した。

社会歴

主婦

症状

頭に物を載せられたような重さ、首の周りがしびれる、眠れない、冷や汗、やる気がない

所見

血圧;/186/96mmHg、ボーっとしていて元気がない

要約

この患者さんはホルモンのバランスの崩れ・自律神経のバランスの崩れなどから更年期障害としての様々な症状が出現しているものと考えられます。高血圧もその一つの症状と考えられます。 したがって、総合的統御系の活性化を目的とした鍼治療を行うことにしました。

経過

毎日鍼治療を行いました。その結果、1ヶ月後には頭の重さが取れ、3ヶ月後には体調が戻って日常の仕事が十分に出来るようになりました。その後は週に2回の鍼治療で体調を整えながら経過を追っています。血圧値は1ヶ月後には132/74mmHgとなり、安定してきました。また、良く眠れるようになりました。 現在は調子が悪い時には毎日、調子が良ければ1週間~10日に1回の割合で予防の意味で通院されています。

コメント

更年期障害は女性なら誰でも体験するものですが、その症状には軽い人から重くて動けなくなる人まで様々です。現在、自律神経のバランスを整える治療法は少なく、その有効性が正しく示されていないのが現状です。鍼治療のその一つであり、今後は症例を積み重ねて鍼治療の有効性を客観的に検討してゆく必要があります。現在、 (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会には研究部として不定愁訴班があり、不定愁訴 (更年期障害も含む)に対する鍼治療の有効性を検討されています。私も班員として参加していますので、より良いデータが示されたらお知らせします。

膝が痛い

69歳 女性

膝痛

現病歴

1年程前に、法事で長時間正座をしたり、お通夜で長時間雨の中を立っていたりと膝に負担をかけたせいか、その頃から、朝起きた時に立ち上がるのがつらく、雨の日には1日中、痛みが強くて外出できない状態が続くようになった。近くの病院でレントゲンやMRIをとってもらったが、老化と言われるだけで、治療は病院内のプールで歩行訓練をするだけだった。あまり、変化がないので知人の紹介で来院した。

社会歴

無職 (ほとんど自宅にいる)

症状

両膝 (特に右) の内側が痛く階段の昇り降りがつらい、正座ができない、歩くとつまずきそうになる

所見

膝のO膝変形、膝が伸びきっていない、両足のむくみ

要約

この患者さんは普段からの運動不足により足の筋力が弱くなり、膝にかかる負担が大きくなっているところに、過剰な負担をかけたことにより膝の痛みが発症したものと思われます。 したがって、総合的統御機構の活性化を目的とした鍼治療と、膝の血行改善と鎮痛効果を目的とした鍼治療を行うことにしました。

経過

週に3回の鍼治療を行いました。その結果、2週間後には膝のむくみが取れ、膝の曲げ伸ばしが楽になってきたので、できる限り外出して足を使って筋力アップを行ってもらいました。 約2ヶ月で階段の昇り降りが楽にできるようになり、半年後にはツアーを組んだ旅行に行けるようになりました。

コメント

膝の痛い人は痛いから外出しなくなります。その結果、足の筋肉が衰え、さらに悪くなってゆく悪循環に陥りやすいものです。膝の痛い人のほとんどは膝が完全に伸びない状態です。上向きに横になった時に、膝と床の間があいてきます。ひどい人は握りこぶしが入るほどです。このよう な状態では膝の一部分にしか体重がかからず、膝の骨の変形を早めてしまいます。したがいまして、このような状態から膝がまっすぐになるように軽く矯正をし ながら鍼治療を進めていきます。よほどひどくなければ5~6回ほどでまっすぐ伸びるようになってきますので、この頃から散歩などをして膝周辺の筋肉を鍛え て膝に過剰な体重がかからないようにしてゆきます。 現在、(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部疼痛疾患班で膝痛に対する症例集積を行っておりますので、結果が出たらご報告いたします。

眠れない、頭が痛い

61歳 女性

自律神経失調症、不眠、頭痛

現病歴

若い頃から眠れない時があった。 10年程前に、頭が痛く、めまいがするようになった。近くの医院で自律神経失調症と言われ、薬を飲んでめまいは治ったが、後頭部の痛みが時々強くでるようになった。1ヶ月程前から、夜眠れない症状がひどくなり、10時頃布団に入っても2時~3時頃まで眠れず、その後朝まで何度も目がさめて、すっきり眠れることがなくなってきたので、知人の紹介で来院した。

社会歴

無職 (ほとんど自宅にいる)

症状

眠れない、後頭部痛、立ちくらみがある、肩こり、体がだるい

所見

ボーッとした感じで、無気力、昼間に時々眠たくなる、睡眠薬の服用はなし

要約

この患者さんは普段から運動不足で体を使わないために睡眠がとれず、体がだるくなるため運動できないといった悪循環を招いています。 自律神経のバランスの崩れも不眠へとつながっており、様々な症状が出現しているものと思われます。 したがって、総合的統御機構の活性化を目的とした鍼治療を行うことにしました。

経過

週に3回の鍼治療を行いました。その結果、3週間後に寝つきが良くなり(布団に入って1時間後に眠れる)ました。しかし、眠りが浅く、早朝(4時頃)に目がさめ、それからは眠れない状態が続きました。 3ヶ月後には6時間ほど眠れるようになり、その間は目がさめないようになりました。 頭痛は激しい痛みがなくなり、肩こりもずいぶん良くなりました。 約1年間の継続した治療により体調が整いました。現在は1ヶ月に1回ほどの鍼治療を継続しています。

コメント

不眠を訴える患者さんは運動不足で体の疲れが少なく、精神的な疲れが多い人が多いようです。したがいまして、この患者さんには、午前30分、午後30分の軽めの散歩をしてもらうようにお願いしました。 また、自律神経のバランスを整える意味で、朝晩の乾布摩擦を勧めました。 運動と乾布摩擦に加え鍼治療を行うことにより、自律神経のバランスが整い、様々な症状が改善したものと思われます。

脳卒中の後遺症で体調が良くない

75歳 女性

脳卒中の後遺症

現病歴

半年前に脳卒中で倒れ、入院。幸い比較的軽かったが、半身の麻痺と言語障害があり、リハビリに通って何とか歩けるようになったが、手足が動かしにくく、自分の人生がつまらなく感じたせいか、最近、やる気がなくなった。 言語障害もやや残り、人と話すのがいやになりかけてきた。 そのような状態を見かねて、知人が鍼治療を紹介し、来院した。

社会歴

無職 (ほとんど自宅にいる)

症状

歩きにくい、膝が痛い、朝に手足がこわばる、しゃべりにくい

所見

やや無気力で元気がない

要約

この患者さんは脳卒中の後遺症から運動不足を招き、全身の筋力低下を起こしているものと思われます。また、今後の不安などの精神的ストレスが自律神経のバランスを崩し、ますます悪い状態になっているものと考えられます。したがって、総合的統御機構の活性化を目的とした鍼治療を行うことにしました。

経過

週に2回の鍼治療を行いました。その結果、1ヶ月後には付き添いがいらなくなるほど足取りが良くなり、明るく元気な表情に変わってきました。 2ヶ月後には週に2回程、プールで泳げるまでに回復し、膝の痛みが随分やわらいできました。言語障害もできる限り人と話をするように指導した結果、ほとんどわからなくなってきました。 半年後の現在も体調を整えることを目的に、週に2回の鍼治療を受けられています。

コメント

脳卒中による後遺症の治療に対しては、まず本人のやる気が起きなけ ればどうしようもありません。それには精神的なサポートが必要です。 次に、筋肉を効率良く動かすためには常に筋肉の血行を良くする必要があり、この作用 を鍼治療が受け持ち、リハビリを行い易い状態に持ってゆくことができるものと思われます。 鍼治療により、痛みがあればそれをやわらげ、関節が固まらないようにするために動かせるような環境作りが大切であると思います。

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